人間関係のトラブルや集団行動への違和感、そして積み重なる自己否定から、中学時代に不登校になったお子様。そのお子様が、高校進学を諦めることなく、自分のペースで通える横浜修悠館高校を選び、少しずつ自信を取り戻していきました。全日制の「普通」から距離をとったことで見えてきた、新しい居場所と生き方。お母さまに通信制高校での3年間の学びと成長、そしてその裏側にあった親としての葛藤を、じっくり伺いました。“娘のペース”を優先して選んだ通信制高校――まず、高校進学のときのことから教えてください。小学生のころから友人はいましたが学校の生活になじめないことが多くありました。中学2年生の頃から娘は不登校になり、3年生の時にはほとんど家にいました。それでも本人は「高校には行きたい」と言っていたんです。でも「全日制は無理だよね」って感じでした。その中でもバイオリンを習ったりバスケのクラブチームに入ったりしました。算数の学習の遅れを取り戻すために塾にも通わせてみたんですが、塾もいけなくなってしまいました。学校の授業についていけなかったり、先生から「なんでそんなこともできないの?」と言われた経験も重なって、自信を完全に失っていたようです。さらに女子グループ内でハブられるようなこともあって、心が折れてしまいました。人付き合いとか先生とのコミュニケーションで悩んで、自分をすごく責めてしまったり。私は「無理に“普通”に合わせなくていい」と伝えたかったんです。だから、いわゆる進学校ではなく、娘のペースに合った学校を探しました。最終的に、公立通信制高校の横浜修悠館高校を選びました。――通信制高校を選ぶ際、どんな点を重視されましたか?一番の基準は、「本人が通えると思える環境かどうか」でした。修悠館高校は一番自宅に近く、週1回、日曜日に通学するスタイルを選べたので、娘にとって負担が少なかったと思います。「登校できなかったら別日に振替もできる」という柔軟さが大きな安心材料でした。あと、私立の通信制高校だとお金がすごくかかるので、まずは公立の通信制高校に行ってみて、そこで本人の希望が見えれば私立の通信制高校を検討しようと思いました。「人に合わせなくていい」──通信制で出会った“自分らしくいる時間”――実際に入学してからの生活はいかがでしたか?最初は通信制の仕組みがわからなくて、私自身も戸惑いました。でも、学校には先生が常駐していて、わからないことは先生が空いている時間に面談で教えてくれました。スクーリングは自分で時間割を組んで参加するスタイル。週1回だけの通学なので、今まで家に引きこもっていた娘にとっても、そこまで高いハードルではなかったようです。出席できなかった授業も別の日に振替が可能だったので、気持ち的にも体力的にも楽だったようです。クラスはありましたが、7人しかいないのと、授業は選択制なので基本的には一人行動。でも自然と顔を合わせる機会が増える中で、友達もできていきました。行きたい日は図書室に行って先生に質問したり自習したり、アルバイトをしながら空いた時間に学ぶスタイルが、娘にはぴったりでした。レポートは紙で提出する形式で、教科書を見ればできる内容。慣れるとペースよく進められるようになりました。学校に行ってないときは、寝てたりバイトしたりして、平日に勉強面で分からないことがあれば学校に行って自習をするという生活を送っていました。――先生方のサポートはいかがでしたか?とても手厚かったです。こちらから声をかければ、いつでも相談に乗ってくれました。図書館には娘が安心して話せる先生がいて、よく話を聞いてもらっていました。頭ごなしに「やりなさい」と言うのではなく、「今のままで十分だよ」と認めてくれる空気がありました。全日制高校のこれが普通っている型がある感じではなくて、通信制高校の先生はいろんな子がいるよねって余裕をもって構えてくれて、自分も勉強になりました。学校にはカウンセラーや精神科医とも連携があり、必要に応じて先生がつないでくれる体制も整っていました。担任の先生もとても理解があり、娘の気持ちに寄り添ってくださったのが印象的です。――バイトも経験されたんですね。はい。コンビニや飲食店など、いろいろなアルバイトを経験しました。年齢の違う人たちとの関わりがあって、社会性も少しずつ育ったと思います。通信制高校の3年間を振り返って――通信制高校での3年間を経て、娘さんはどのように変わりましたか?以前のように人と比べて落ち込むことが少なくなり、「自分は自分でいい」と少しずつ思えるようになった気がします。体育の授業が苦手で途中で帰ってきたこともありましたが、「じゃあ次は頑張ってみようか」と言えるような関係が築けたのも、この学校だったからだと思います。――卒業後の進路についても教えてください。学校では進路相談が設けられていて、職場体験や専門学校の説明会などがありました。娘は「お金を稼ぎたい」「就職したい」と言っていて、最終的にアルバイト先で出会った方の紹介でエステサロンに就職しました。姉が美容系の道に進んでいた影響もあって、今はネイリストを目指して頑張っています。「頑張らなくてもいい場所から、未来が始まった」――お母さまが感じた通信制高校の魅力は?正直、入学前は何もわからなかったけれど、この3年間、娘も私も本当に多くを学びました。全日制の学校に無理に通わせていたら、今のように社会に出る力は育たなかったかもしれません。もし今、不登校で悩んでいるご家庭があったら、通信制高校という選択肢を知ってほしい。頑張らなくてもいい場所から、未来は始められるんです。――最後に、同じように悩んでいる方へメッセージをお願いします。「ここから踏み出せればいい。ダメだったらやり直せばいい」と思える場所が必要です。親として「こうなってほしい」と願う気持ちもありますが、子どもの気持ちを尊重して、信じてあげることが大事だと思います。ペースは人それぞれ。自分を信じられたら、子どもにも楽しい未来が見えてくるはずです。お母さまのそのまなざしが、同じように悩みを抱えるご家庭の背中をそっと押してくれるように感じました。