2023年4月、大阪府に住むあるご家庭で、娘さんが新たな高校生活をスタートさせました。選んだのは、近畿大阪高等学校という通信制高校でした。この学校を選んだ理由には、「第1期生になれる」という特別感や、先生の対応に信頼感を持てたこと、さらに制服のデザインが気に入ったことなどがありました。制服は自由ですが、着用も可能という柔軟なルールに、娘さんは魅力を感じていたようです。通信制高校を選ぶにあたっては、他にも複数の学校を検討されていました。具体的には、松陰高等学校、八洲学園高等学校、WILL高等学校といった学校が候補に挙がっていたそうです。しかし最終的には、近畿大阪高等学校への進学を決断されました。中学校時代は支援級に在籍しており、中学校の先生からは「通信制高校か支援学校に進学することになるかもしれない」と早くから伝えられており、長男も通信制高校に通っていたことで、通信制高校という選択肢は自然な流れでもありました。「支援がある」と信じて入学したが、現実は大きく異なっていた入学後、娘さんが選んだのは、完全に通学しない「フルリモート型」のコースでした。このコースでは、日常の授業はすべてオンラインで行い、必要なサポートも自宅から受けられるという説明を受けてました。また、マンツーマンで支援学級・支援学校の経験教員が寄り添い、発達障害や知的障害がある生徒にも配慮した対応があるとされており、ご家庭としても安心して通わせることができると感じていたといいます。しかしながら、入学後まもなくして、その説明とは異なる現実に直面することになりました。夏休みに実施された集中スクーリングは、当初「2週間程度」と案内されていましたが、実際には合計で約20日間も参加が必要となりました。「少しだけ」と言われていたスクーリングの内容が次々と追加されていく中で、ご家庭は「聞いていた話と違う」と困惑を抱えるようになっていきました。スクーリング終了後に懇談があり、先生から「このままでは単位を出すことができない」「娘さんは授業についていけていない」といった厳しい指摘がありました。そして驚いたことに、「近畿大阪高等学校は進学校でもあるので、レベルが高い生徒が多い。3年では卒業できないかもしれないが、30歳までかけて卒業することもできますよ」と軽い口調で告げられたそうです。これには、保護者としても非常に強いショックを受けたといいます。当初の説明では、4年かかる可能性もあるという話には納得していましたが、「30歳まで」という発言は全く想定外だったからです。自主退学の決意懇談の後、ご家庭では退学も視野に入れて娘さんと話し合いを重ねました。すると、娘さんは「実はずっと辞めたいと思っていた」と涙ながらに打ち明けたそうです。その理由は、授業内容や学習支援だけでなく、教師の態度に対する強い不信感があったからです。「先生が気持ち悪い。特定の生徒にだけ異常に親しげに接しているのが不快。もう限界だった」と娘さんは語りました。実際に学校に通っていた時期には、他の生徒が先生から直接、答えの書かれたプリントを渡されている場面を目にしたこともあったそうです。また、先生が生徒のアルバイト先に訪れるなど、教育とは関係のない私的な関わりもあったことを知り、保護者として非常に心配になりました。教育現場とは思えないような曖昧で不透明な対応が、日常的に行われていたのです。リモート授業についても多くの問題がありました。たとえば、カメラの位置が定まらず板書が見えなかったり、音声が途切れて授業の内容が把握できなかったりといったことが繰り返されていたそうです。さらに、授業内容は生徒の理解度に合わせることなく一方的に進められ、わからない部分の復習を希望しても放置される場面が多くありました。保護者としては、教育の質やサポート体制に疑問を感じるだけでなく、学校としての倫理観や安全意識にも強い不安を抱くようになっていきました。入学前に受けた説明とはあまりにも違いが大きく、結果的に「教育機関としての責任感が欠けている」と感じたそうです。次の進路へ――慎重な学校選びの大切さ現在、娘さんは通信制高校を中途退学し、自宅学習をしながら新たな学校への再入学を検討しています。これまでの経験から、保護者は学校選びにおいて何よりも「現場の実態を見極めること」が大切だと実感しているといいます。パンフレットやWebサイトには魅力的な言葉が並んでいますが、実際の対応や支援体制がどうかは、直接足を運び、何度も質問し、教員やスタッフと対話することでしか見えてこない部分も多くあります。特に注視しているのは、女性教員が多く在籍しているか、カウンセラーなどの専門職が常駐しているかといった、心のケアを担う体制の有無です。今回のような事態を二度と繰り返さないためにも、安心して通える学校環境を提供してくれるかどうかを重視しているとのことです。また、娘さんの中学校在籍時にも課題がありました。中学校の先生は通信制高校について詳しくなく、時には偏見を持った言葉を投げかけられることもあったそうです。「通信制高校なんて、マンションの一室でちょろっとやってるだけじゃないか」という言葉を耳にしたとき、保護者は強い悲しみと怒りを感じたと振り返っておられます。子どもにとって「本当に安心できる場所」とは何か通信制高校は、通学が難しい生徒や、個別の特性に応じた柔軟な学び方を求める生徒にとって、重要な選択肢の一つです。しかし、それが単なる「形式」だけのものであってはなりません。実際に子どもたちが安心して学べるようにするためには、教職員一人ひとりの姿勢や支援の質が問われます。今回の経験を通じて、保護者は「学校は制度や仕組みだけでは測れない」と痛感したそうです。本当に信頼できる学校とは、子どもが自分らしくいられる場所であり、困ったときにすぐに手を差し伸べてくれる存在がいる場所であるべきだと考えています。現在、ご家庭では次の進路に向けて前向きに準備を進めており、「今度こそ、娘にとって安心して通える場所を見つけたい」と強く願っておられます。学校選びにおいて、見かけの制度やキャッチコピーに惑わされることなく、本質的な支援や対応を見極める目を持つことの大切さが、今後の選択に大きな意味を持つことでしょう。