部活動でのトラブル、そして転校の決意 彼女はもともと私立高校に通う活発な女子生徒でした。部活動にも取り組んでいましたが、高校2年生のとき、部内での男女関係をめぐるトラブルがありました。トラブルによって人間関係が急にぎくしゃくしてしまい、学校に通うこと自体が大きなストレスとなっていきます。「このまま在籍しても心身が持たないのではないか」と感じた彼女は、退学を考えるようになりました。 その頃から、お母さまも彼女の様子に強い不安を覚えていました。元気がなく、次第に拒食症のような状態が見られ始めたのです。ある日、お母さまは浴室で食べ物のかけらを見つけ、問い詰めると、娘は「食べて吐いた」と打ち明けました。お母さまは「このまま拒食症がひどくなると命に関わる」と感じ、すぐに心療内科を受診。数回のカウンセリングを経て、母子で一緒に取り組む回復の時間が始まりました。そこでお母さまは無理に通学を続けさせるより、別の学び方を探す決意をします。転入できる学校を探して 最初に検討したのは宇都宮高校の通信課でした。しかし、私立から県立への編入は制度上できず、もし入学できたとしても、再び2年生からやり直す必要がありました。それでは本人の希望である「同級生と同じ時期に大学進学をする」という目標が叶いません。 お母さまは娘の体調と将来の希望を両立できる学校を探し、近くの通信制高校やサポート校を調べました。トライ高等学院、おおぞら高等学院、N高等学校、鹿島学園など、さまざまな学校の説明会に足を運びました。その中で、最も印象が良かったのが第一学院高等学校でした。 第一学院は全日制に近い通学コースがあり、「履歴書に書いても通信制高校と思われないのでは」という安心感がそのときあったそうです。また、校舎の雰囲気が穏やかで、先生方の対応も丁寧に感じたそうです。大学進学を目指していたため授業のレベルが高かったことも魅力的でした。立地面でも安全で、高崎キャンパスなら乗り換えなしで通える距離にあり、お母さまにとっても安心できる環境でした。こうして、彼女は2020年12月、高校2年生の冬に第一学院高等学校へ転入しました。2年生の冬、オンラインでの奮闘 転入時期が12月だったため、年度内に必要な単位を取得するには時間との戦いでした。彼女は2年生の残り3か月間、モバイルコースで自宅学習を行うことになります。オンライン授業で、1年分の学習を一人でこなさなければなりませんでした。 「単位を取り切れないかもしれない」と焦る娘を支えるため、お母さまは受験生の母のように伴走したといいます。履修状況は親のスマートフォンからも確認できたため、母娘で毎日学習進捗を確認し合いました。理数系の課題は特に難しく、全日制高校で習った内容を忘れてしまっていたため、レポート提出にも時間がかかりました。それでも、地道な努力の結果、必要な単位をすべて修得し、無事に3年生へ進級することができました。通学コースでの学びと人間関係の回復 3年生からは週2回の通学コースに切り替えました。第一学院では週5と週2の通学コースがあり、彼女は体調とのバランスを考えながら週2を選びました。必修授業のある日には登校し、他の日はアルバイトをしながら学習を続けました。 通学初日は緊張していました。「大人しい人が多い印象で仲良い人ができるか心配」と不安もあったそうです。しかし、いざ行ってみると、明るく話しかけてくれる生徒も多く、すぐに打ち解けることができました。彼女いわく、クラスには、集団生活が苦手なタイプの生徒と、自由がない全日制高校の雰囲気になじめず通信制高校に来たタイプに分かれていたそうです。彼女は特ににぎやかなタイプの友人と仲良くなり、休みの日には一緒に遊びに行くほど仲良くなったそうです。第一学院高校では修学旅行等のイベントもありましたが、強制ではありませんでした。彼女は修学旅行に参加せず仲良しの友達とディズニーランドに行ったそうです。 先生方のサポートも手厚く、勉強で分からない部分は個別で指導してもらえる環境がありました。授業のコマは固定されておらず、必要に応じて追加で申し込みも可能でした。担任の先生とは定期的に面談を行い、進路や生活面の相談もできる環境が整っていました。お母さまも「先生方がこまめに連絡をくれて安心できた」と話します。摂食障害との向き合い 転入前後、彼女は摂食障害に悩まされていました。通信制高校に転入した後は休日には一緒にパンケーキを食べに出かけたり、気分転換の外出を増やしたりすることで、少しずつ心が落ち着いていきました。お母さまは「治療よりも、娘が安心して過ごせる時間を大事にした」と振り返ります。父親は当初、「学校をやめて働け」と反対しましたが、娘が懸命に学ぼうとする姿を見て、次第に理解を示していったといいます。進路選択と大学合格 3年生になると、担任の先生から「進学と就職、どちらを考えていますか?」と質問を受けました。彼女は「社会に出る準備がまだできていない」と答え、進学を希望しました。先生はさまざまな職業を紹介しながら、「進学すれば選択肢がもっと広がる」と励ましました。 夏には志望校を帝京大学に決め、面接練習や小論文対策にも力を入れました。そして、秋の入試で見事帝京大学経済学部に合格します。 彼女は「理系科目が苦手だったので経済学部に進みたかった。やりたいことがまだない中で、就職の幅も広いし、公務員コースもある」と話します。進学後は、自分で時間割を組み立て、週4日通学する生活を続けました。高校時代と同じように朝早く起きて通学しますが、友人も増えて、充実した学生生活を送っています。通信制高校で得たもの お母さまは振り返ってこう語ります。 「通信制に行って本当によかったと思います。全日制の学校に通うことがすべてではありません。学び方も働き方もそれぞれでいい。世間体を気にして『学校に行かないのは悪い』という考え方もありますが、何より大事なのは本人の命です」 お母さまは神経小児科で働いており、日々さまざまな子どもと向き合っています。中にはリストカットをしてしまったり、家庭にトラブルを抱えたりする子も多いといいます。「勉強は将来の選択肢を広げるための手段であって、どんな制度であっても知識を得られることに意味がある」とも語りました。また、当時勤めていた病院で通信制高校に通う子供と多く接する機会があったそうで、「自身の子どもが通う事になるとは思わなかった」と振り返ります。転校することが決まったときは「自分の子供が起こしてしまった不祥事に腹が立って仕方がなかった」といいますが、見学に行った時の学校の先生の対応の中で、そんな事は些細な事で命があって良かったということに気づかされました。 第一学院の少人数制の環境は、先生の目が行き届きやすく、子どもの小さな変化にもすぐ気づいてもらえる点が安心だったといいます。また、転入後の学習内容やサポートもしっかりしていて、希望の大学にも合格することができ、本当にこの学校にして良かったですとお母さま。まとめ:自分のペースで学ぶ勇気 彼女の高校生活は、決して順風満帆なものではありませんでした。部活動のトラブル、拒食症、そして転校という大きな転機を経て、彼女は「自分のペースで学ぶ」という新しい道を選びました。その決断を支えたのは、お母さまの理解と、第一学院の温かい先生方でした。 通信制高校という選択は、「逃げ」ではなく「前へ進むための工夫」です。彼女が掴んだ帝京大学への進学は、その努力の証でもあります。 彼女は今日も、自分のペースで未来へ向かって歩み続けています。