「全日制はきっと難しい。でも、高校には行かせたい」そう思って動き始めたのは、中学1年生のときでした。発達障害と軽度知的障害があるお子さんの進学を考え、保護者の方が2年かけて調べ尽くし、最終的に選んだ村上学園高校。その道のりと実際に感じたことを、お母さまに伺いました。「地元で通える場所」を最優先にお子さんは発達障害、軽度知的障害をもっていて、小学校高学年から不登校になりました。中学校でも通常級と特別支援級を行き来しながらも登校が難しい日々が続きました。それでも、高校に進学させたいという思いから、中学1年生の頃から通信制高校を視野に入れて情報収集を始めたそうです。特に重視していたのは、「地元だけでスクーリングを完結できるか」という点でした。夏休みに北海道や他県で集中スクーリングを受けるような仕組みは、本人にとって大きな負担になると思われたからです。通信制高校の情報収集は個別相談で10件ほど、話を聞くだけだともっと多かったと言います。その中で、星槎高校と村上学園高校が最終的な選択肢となりました。星槎高校は全国にキャンパスがあり、県外に行かなくてもよいという説明を受けて候補に入りました。もう一つ候補に挙げたのは村上学園高校。香川県内で通えるうえに、地元の評判も良く、周囲の友人も通っている学校でした。さらに中学校のスクールカウンセラーにも勧められたことも決め手の一つになりました。「うちの子に合う通い方はどれだろう」勉強面については「ついていけるかどうかは、実際に入ってみないと分からない」と思っていたそうです。それでも、少しでも学校で学ぶ機会を持たせたいという思いがありました。村上学園高校には週1・週4・週5コースがあり、自宅でタブレット学習をメインにするのは難しいだろうと考えて、週4コースを選択。学校に行って授業を受けることを基本にしながらも、週5は負担が大きいと判断したのです。「実際には出席はそれほど厳しくなかったし、授業も中学校の復習から入ってくれたので、全日制ほどがっつり勉強する感じではなかった」と振り返ります。行事や友人関係への不安と安心行事は苦手だし、できれば避けたいという本人の性格を踏まえて、行事の数や参加の必須度も重要な判断基準でした。イベント自体はあったものの、ほとんどが任意参加。実際に参加したのは学園祭くらいであったそうです。入学後は「友達も先生もいい人たちばかりだった」とお母さま。周囲には同じように少し事情を抱えた生徒も多く、優しい雰囲気があったのが良かったと言います。「いい学校に入れたな」と感じた瞬間もあったと話してくれました。想定外だった「テスト」という壁ただ、すべてが順調だったわけではありませんでした。「勉強は思った以上に難しかった」とのこと。特に大きな壁になったのが、テストでした。レポートは提出できていたものの、テストは学校に行ってみんなと一緒に受けなければならないという仕組みでした。中学校までは個別で別室受験などの配慮があったのに、高校では基本的に「他の生徒と同じように」受講するという運用でした。お子さんは「テストがわからなくて数分で終わってしまう自分」と「ギリギリまでテストに取り組む他の生徒」を比べることに強いストレスを感じ、テストを受けに行くことが苦痛になりました。あと1回テストを受ければ進級できる、という場面でも「絶対に行かない」と言い張り、結局単位を取得できずに退学を決断することになりました。「ここまでテストへの抵抗感があるとは思っていなかった」と、お母さまも想定外だったと振り返ります。退学を決めたときの気持ちとその後最初は普通に学校に行けていたものの、夏休み明けから次第に「行きたくない」という気持ちが強くなり、10月を最後に登校は途絶えました。友人関係で小さなトラブルがあったことも理由の一つでした。その後はアルバイトとして働きながらも、軽作業系のアルバイトを探しているといいます。面接ではなぜ通信制高校をやめたのか、について毎回きかれるそうです。通信制高校は「柔軟に通える」「自分のペースで学べる」などのメリットがあります。しかしテストやスクーリングの対面受講は単位取得上必要で、それが負担になり勉強を継続できないケースがあります。また、個別の配慮をあまり設けない通信制高校もあります。お母さまは最後に、「子どもが行けるかどうか、だけじゃなく、テストの配慮など、どうやって学びを続けられるか、という視点でもっと相談してよかったのかもしれない」と言葉を結びました。