不登校を経験した息子さんが、自ら選んだ通信制高校「N高」。自由度の高い学びの仕組みを活かし、効率的に単位を修得。高校生活の後半には一人暮らしと就職を実現しました。保護者が抱く不安や、通信制高校ならではの学びの実情を交えながら、N高での3年間を振り返ります。中学時代、不登校の日々。「高校は卒業したい」という本人の強い思い息子さんは、中学時代に不登校を経験しました。学校に行くことが難しくなった日々の中でも、勉強自体は好きだったといいます。そのため、高校進学を考える際には「高校だけは卒業したい」と本人の意志がはっきりしていました。進路を考える中で、息子さん自身が「N高に行きたい」と提案しました。通信制高校にはさまざまな選択肢がありましたが、その中でもN高を選んだ理由は、「卒業しやすい仕組みが整っている」という点に惹かれたから。保護者であるお母さまは、最初こそ「家で一人で勉強できるのだろうか」「モチベーションを保てるのだろうか」と不安を感じていました。しかし、勉強のツールやサポート体制が充実していること、そして何より本人のやる気を信じて背中を押したといいます。「通信制は自分で管理する部分が多いので大変だと思いましたが、うちの子は勉強が好きで、パソコンにも強かった。だからN高ならうまくやれるかもしれない、と思いました。」その言葉通り、息子さんはN高での学びを自分のペースで進めながら、大きく成長していきました。N高での学び方:自分のペースで効率よく、興味を追求できる環境N高ではネットコースに在籍し、授業はすべてオンラインで受けました。オンデマンド型の映像授業を自分のペースで進めていくスタイルです。「普通の高校のように毎日通って授業を受ける必要がない分、自由に時間を使えるのがN高の良さでした。うちの子は、なるべく早く単位を取り終えて、残りの時間を自分の将来のために使いたいと考えていたようです。」実際、息子さんは驚くほどの集中力で学習を進めました。入学からわずか3か月で、卒業に必要なレポートをすべて終わらせてしまったといいます。「夜通しレポートをやっていて、親の方がびっくりするくらいでした。自分で決めたことを最後までやり抜く姿を見て、頼もしく感じましたね。」勉強だけでなく、趣味にも思いきり打ち込むことができたのも通信制の魅力でした。時間の制約が少ないため、興味のあることをとことん追求できる。本人にとって、それが大きなモチベーションになったようです。「息子はスーパーの鮮魚売り場でアルバイトをしていました。アルバイトは朝が早いので、生活習慣が乱れることはなかったです。」N高の仕組みを活かして効率的に時間を使い、充実した高校生活を送ることができました。スクーリングと交友関係:オンラインから広がる全国の仲間たちN高では、年に数回スクーリングがあります。息子さんは所沢キャンパスでのスクーリングを経て、全国のN高生たちと交流する機会を得ました。入学当初は「一人でやっていけるのか」と心配されていたお母さまですが、息子さんはゲームをきっかけに友人を作り、全国各地に仲間ができたといいます。「N高の生徒同士でオンラインで話したり、ゲームでつながったりしていました。スクーリングでは実際にその友達と会って、一緒に授業を受けることができたようです。」沖縄でのスクーリングも予定されていましたが、その年はちょうど台風や北朝鮮のミサイル問題が重なり、残念ながら体育や沖縄歴史学習などの課外活動が中止になってしまいました。座学は受けることはできましたが、沖縄本校から出ることができず、想定していた活動が十分にできなかったといいます。それでも、息子さんはオンラインでの学びやつながりを十分に楽しんでいたようです。「普段オンラインでしか会えない仲間や先生と直接会えるのは、やっぱり刺激になっていたみたいです。短期間でも仲間意識が生まれて、学校への愛着がわいたようでした。」交流の機会が限られる通信制高校ではありますが、N高ではオンラインイベントや交流会が頻繁に開催されており、離れていてもつながりを感じられる環境が整っています。一方で、お母さまは「人との交流が少ないため、孤独を感じやすい面もある」と率直に語ります。しかし、その分、自分の時間をどう使うかを考え、自主的に行動できるようになったことは、大きな成長だったといいます。卒業後の進路:「内装の職人になる」という夢を実現息子さんには、高校入学当初から明確な夢がありました。それは「内装の職人になること」。親戚が経営する内装会社があり、そこで働くことを目標に、高校生活を送っていたといいます。「高校に入る時点で、すでに『卒業したら内装の仕事をしたい』と言っていました。だから、なるべく早く単位を取って、その分現場で経験を積めるようにしていたんです。」3年生の授業をすべて終わらせた後、息子さんは実際に親戚が経営している内装の会社に入り、働き始めました。高校生活の終盤には一人暮らしも始め、自立への一歩を踏み出します。「N高の良いところは、がっつり働きながら高校卒業資格を取れることだと思います。普通の高校ではなかなかできないことですよね。」進学も選択肢としてはありましたが、本人は「今はやりたいことがあるから大学には行かない」と話し、就職を選びました。「ZEN大学(N高を経営する学校法人日本財団ドワンゴ学園が経営する系列の通信制大学)に行ってもいいよ、と話しましたが、『今は働きたい』と。自分の意志で決めて動けるようになったことが、嬉しかったです。」N高を選んでよかったこと、よくなかったことお母さまは、N高を選んで本当に良かったと話します。「通信制高校には、良いところも悪いところもあります。でも、本人のやる気さえあれば、本当に可能性が広がる場所です。」通信制高校のメリットとして、まず「自分のペースで学べること」「通学の負担が少ないこと」が挙げられます。体調や生活リズムに合わせて柔軟に学べる点は、不登校経験のある生徒にとって大きな安心材料です。一方で、デメリットは「人との関わりが少ないこと」や「自己管理の難しさ」。課題提出や学習の進捗管理をすべて自分で行わなければならないため、強い意志が必要になります。「でも、うちの子はその中で“自分で決めてやり切る力”を身につけました。通信制に行くとき、周りの目は少し気になりましたが、今は胸を張って“行かせてよかった”と言えます。」また、学費は率直なところ高いと感じたとのこと。沖縄スクーリングの渡航費用も全て自分持ち。また、パソコンの費用も家計にとっては大きなものになるので、新たに買わず家庭にあったもので済ませました。N高のサポート体制N高では、担任やメンターによる月1回の面談があり、学習状況やメンタル面のサポートを受けることができます。お母さまは、オンラインでのやり取りの丁寧さに安心感を覚えたといいます。「質問や相談をすると、先生方がとても丁寧に対応してくれました。返答も早く、オンラインでもちゃんと見てくれている感じがしました。」ただし、先生によって対応の温度差があったり、返信が遅いと感じることもあったそうです。「マニュアル的な対応かな?」と思う瞬間もあったと率直に語ります。それでも、全体としてはサポート体制が整っており、特に保護者が学習進捗を確認できる「保護者サイト」が便利だったと話します。「どこまで単位を取っているのか、どんな課題が残っているのかが見えるので、親としても安心でした。」一方、学費での通信制高校という新しい選択肢息子さんがN高に入学した当時、周囲ではまだ通信制高校に対して偏見を持つ人もいました。「やっぱり“普通の高校に行けなかったの?”という目で見られることもありました。でも、うちの子がN高で前向きに学ぶ姿を見て、私自身の考えも変わりました。」今では、「本人の意志を尊重してよかった」と心から思えるといいます。「やっぱ本人のやる気があれば、通信制高校も一つの選択肢になる。良いところ悪いところあると思うけど結果的には言ってよかった。」まとめお母さまの息子さんは、N高で「自分のペースで学び」「自分の意志で働く」力を身につけました。中学時代に不登校だった彼が、高校卒業後に職人として働き、一人暮らしをしながら自立している姿は、通信制高校の可能性をまさに体現しています。「子どものやる気を信じて、背中を押してあげること。それが一番大切だと思います。」通信制高校は決して特別な場所ではなく、誰もが自分らしく学べる新しいスタンダードの一つ。お母さまの体験は、そのことを教えてくれる貴重な実例です。