不登校から通信制高校へ――自分で選び取った道
人間関係の壁と不登校
高校進学当初は中高一貫の進学校に在籍していました。しかし、中等部から内部進学した生徒たちがすでにグループを作っており、なかなかクラスに馴染めなかったといいます。1年生の冬には「学校に行きたくない」と口にするようになり、学校の中では部活動が唯一の居場所になっていました。
「4月になればクラス替えもあるし、担任も変わるから」とお母さまは説得していましたが、2年生になってもクラスにあまりなじめず、同じ部活動の生徒に嫌なことを言われたことをきっかけにとうとう通えなくなってしまいました。
「お兄ちゃんがダウン症で、学校に通えずに家にいる姿を見ていたこともあって、“行かなくてもいいんじゃないか”と本人が思ってしまったのだと思う」とお母さまは振り返ります。
転校を決めた彼女は、自分でインターネットを使って通信制高校を調べました。条件は「自宅から近すぎず知り合いがいない環境」「通学ができる距離」。こうして候補は2校に絞られました。
実際に校舎を見学に行ってみると、片方の学校は休校日で玄関が暗く、雰囲気もどこか閉鎖的。対して飛鳥未来高校は、明るい雰囲気で生徒の出入りも活発に感じられたため、安心感がありました。最終的に、自宅からバス1本で通える飛鳥未来を選びました。
お母さまは「ネットの情報だけではわからない。実際に学校を見に行くことが大切」と強調します。
飛鳥未来での生活――「自由」さと「自己責任」
飛鳥未来高校で選んだのは週3日通学コース。髪型やメイク、服装に制限はなく、アルバイトも自由。もともと通っていた学校では校則がとても厳しくアルバイトも禁止だったため、交通費を自分で稼げるようになったのは大きな変化でした。
「遅刻しても厳しく注意されないのが心地よかった。前の学校では小さなことまで指導されていたので、気持ちが楽になった」と振り返ります。
一方で、学習面での不安は大きかったといいます。先生の多くは20代で、フランクに話せるのは良かったものの、「頼れる先生」というよりは「少し年上の友人」に近い感覚でした。
「中学の勉強内容を質問したら先生が答えられなかった。びっくりしました」と振り返っています。
保護者も「先生というより、企業に勤める新入社員のように見えた」と率直に語ります。
先生とのやり取りとしては、出席が足りなくなる時やテストの点数が低すぎる場合に連絡を受けたそうです。通信制高校は教員の経験や指導力にはばらつきがあるのが実情です。
勉強は「自分でやるしかない」
大学進学を考えたとき、通信制高校特有の難しさが浮かび上がりました。
「共通テストの日程を教えてくれるくらいで、具体的な受験指導はほぼなかったです。推薦枠があるかどうかも、自分から聞かないとわからなかった」と本人は語ります。
出願要項の確認、受験スケジュールの管理、書類の手続き――すべて自分で行わなければなりませんでした。全日制高校であれば担任や進路指導部が細かくサポートしてくれる部分を、通信制では自力で乗り越える必要があったのです。
授業に関しても高校というよりも、中学校で行う範囲の焼き直しの印象があり、テストがあっても前日にちょっと教科書を見返せば点数が取れる難易度だったそうです。進学希望で受験で必要な科目も、授業が開設されていなかった事もありました。
「もし進学希望でなかったら、のんびり通えて楽しかったと思う。でも大学進学を目指す場合は、周りの刺激もサポートも少ないので大変でした」と冷静に振り返ります。
通信制高校で得られた人間関係と経験
学校生活で救いになったのは、友人関係でした。仲良しの6人グループができ、お弁当を一緒に食べたり、登校中に会話を楽しんだり。卒業後は疎遠になったものの、「在学中に仲間がいたこと」は大きな支えになりました。
一方で、学校行事はあまり参加しませんでした。ディズニー遠足などのイベントもありましたが、入学直後で友人が少なかったため、参加する気になれなかったといいます。
また、アルバイトが自由にできたことで、自分の生活費を一部賄えるようになりました。
以前の進学校では「アルバイト禁止」が当たり前だったため、この経験は本人にとって大きな自信となりました。
「高校の交通費は自分で稼いでいた。自由に働けるのが嬉しかった」と本人は語ります。社会経験を早く積むことができた点は、通信制ならではのメリットといえるでしょう。
大学進学、そして広がる未来
卒業後、彼女は淑徳大学教育学部に進学しました。きっかけは「子どもが好きだから」。ボランティア活動を通して幼児教育に関心を持ち、小学校と幼稚園の教員免許が取得できる大学を選びました。現在は一人暮らしをしながら学業に励み、「高校で青春らしい経験が少なかった分、大学生活を思いきり楽しみたい」と語ります。
共通テストにも挑戦しましたが、私立大学を選んだため、学習の成果を無駄にすることなく進学できました。スタディサプリなどオンライン教材を利用し、親御さんからも中学範囲の勉強を教わりながら乗り越えたといいます。
通信制高校は「普通の選択肢」
お母さまは、通信制高校に通ったことを肯定的に振り返ります。
「昔は不登校=悪いことと捉えられがちでした。でも今は違う。本人に合った環境で学べばいいんです。コロナのとき『感染した』と言いにくかったのが、今は当たり前に言えるようになったのと同じ。通信制高校に通うことも、隠す必要のない普通の選択肢になってきていると思います」
また「日本もアメリカのように、年齢や学年に縛られずに学べる社会になればいい」とも語ります。
しかし、授業料の支払い区分が、保護者に無駄のない仕組みだと有り難かったとも話してくれました。実際に7月に転入したくても、授業料は前期分を全額を払わなければなりませんでした。しかし単位取得には試験の事前登録が必要で、7月入学では前期の試験は受けられないから単位は取れないと言われたそうです。
まとめ――通信制高校が教えてくれる「自由と責任」
今回の体験談から見えてくるのは、通信制高校の二面性です。
校則が緩く、アルバイトやおしゃれを楽しみながら、自分のペースで通える“自由”。しかし、大学進学を目指す場合は、学習のモチベーションや受験情報を自分で管理する“自己責任”が大きくのしかかります。
それでも彼女は、自ら道を切り開き、教育学部で学ぶ大学生として新しい生活を歩み始めました。「通信制高校を選んだからこそ、自分で考え、動く力がついた」と感じている部分もあるでしょう。
通信制高校は決して「逃げ道」ではなく、一人ひとりの個性や状況に合わせた「もう一つのスタンダード」なのです。

