兄弟たちが選んだ「行かない選択」と、クラーク高校との出会い
長女が中学生の時に経験した担任との不和は、家族にとって大きな転機となりました。次第に学校から足が遠のく長女の姿を見て、下の兄弟たちも自然と学校へ行かないという選択をするようになっていきました。教育の現場に身を置いていたお母さまは当初、戸惑いを感じたものの、無理をさせて心を折るよりも、彼らが自分らしくいられる場所を探す方が重要だと考えるようになります。
そんな折、知人から紹介されたのがクラーク記念国際高等学校でした。オープンキャンパスに足を運ぶと、そこには楽しそうに過ごす生徒たちの姿と、型にはまらない自由な学びの空気が流れていました。「ここなら大丈夫かもしれない」。その直感は、長女が通い始め、少しずつ自信を取り戻していく姿を見ることで確信へと変わりました。長女の成功体験が、結果として兄弟全員の進路を決定づける道標となったのです。
「月1回の通学」が育んだ、社会で通用する自己管理能力
お母さまの家庭では、子どもたちの多くが月1回の通学コースを選択しました。学習障害を抱える子、アルバイトに精を出す子など、それぞれの特性や生活スタイルに合わせて自宅学習を主軸に置くスタイルです。通学が必要なのは理科や美術といったスクーリングが必須の授業のみで、年に10回にも満たない頻度でしたが、その「自由な時間」こそが彼らを成長させました。
子どもたちは自分で時間を管理し、夜はアルバイトに励み、夕食後に課題を片付けるといった社会的なリズムを自ら作り出していきました。お母さまは「手伝ってと言われない限りは手を出さない」というスタンスを貫き、大変そうな時もあえて“自分の課題”として取り組ませました。自由だからこそ、何もしなければ単位が取れず、留年の危機も訪れる。そのシビアな環境の中で、彼らはスケジュールを立ててコツコツと進める「大人としての責任感」を自然に身につけていったのです。
教師と生徒の「心地よい距離感」が育む一人の大人としての自覚
通信制高校での先生との関わりについて、お母さまは「生徒を一人の大人として扱ってくれる距離感」が心地よかったと振り返ります。手取り足取りの進路サポートは多くない反面、自主性を重んじる姿勢が彼らの自立心を刺激しました。もちろん、課題で分からないことがあれば電話やメールで質問できる手厚いバックアップ体制はありましたが、それも「自分から動く」ことが前提です。
提出期限より早く課題に取り組み、分からないことは早めに解消する。こうした自律的な姿勢が、社会に出てから高く評価されることになります。お母さまの元を離れ、社会へと飛び出した子どもたちは、職場でも「報連相(報告・連絡・相談)がしっかりできる」と信頼を勝ち得ています。通信制という環境で、先生との程よい距離感を保ちながら自ら道を切り拓いてきた経験が、確かな社会性となって開花したのです。
「生きていることが何より大事」看護師の母が辿り着いた教育の真理
長年、命の現場である看護の仕事に携わってきたお母さまが、4人の子育てを通して辿り着いた結論は、シンプルながらも重みがあります。それは「生きていることが何より大事であり、普通の高校へ行くことだけが人生ではない」ということです。無理に全日制に通って心が折れてしまうくらいなら、通信制という選択肢で自分のペースを守りながら卒業を目指す方が、遥かに前向きな決断だといえます。
かつて不登校になった長女は、通信制で高卒資格を得たことで中退を免れ、25歳で大学へ入り直して再び教育の現場へと戻っていきました。他の子どもたちも、アルバイトでの社会経験を武器にしたり、専門学校を経て就職したりと、自分らしい「自立のかたち」を見つけています。
通信制高校は、自分の人生を自分で選ぶための第一歩
4人全員が通信制高校を選んだお母さまの家庭。最初は不安もあったといいますが、今ではその選択に絶大な信頼を寄せています。ドラマで見るようなキラキラした青春ではないかもしれませんが、その分、自分の時間をどう使い、どう生きるかを真剣に考える力が養われました。
「不安かもしれないけれど、この進路もアリだと思って見守っていていい」。お母さまの言葉は、今まさに悩んでいる多くの保護者にとって、優しくも力強いエールとなるでしょう。通信制高校という選択は、決して後ろ向きなものではなく、子どもたちが「自分の人生を自分の足で歩き出す」ための、立派な第一歩なのです。

