「先生が苦手」だった私が、再び対話を求めて選んだ場所
彼女が中学校という場所に行けなくなってしまった最大の理由は、身近な大人である先生との関係にありました。悩みを相談してもわかってもらえない、自分の話を聞いてくれないという絶望感。そして何より、感情が読み取れない無表情な大人とのコミュニケーションに、彼女の心は次第にすり減っていきました。
そんな彼女が高校進学にあたって最も重視したのは、システムとしての「卒業」ではなく、人間としての「対話」ができる環境でした。通信制高校の候補には大規模で有名なN高もありましたが、YouTubeや口コミを丹念に調べる中で、大勢の中に埋もれてしまう不安や、画面越しだけではない日常的な交流を求めている自分に気づきました。そうして出会ったのが、女子校という安心感があり、先生と一人ひとり向き合える清心女子高等学校だったのです。
週2日から始まった、無理のない心のリハビリテーション
清心女子高等学校での生活は、何よりも「自分のペース」が守られていました。最初から無理をして毎日通うのではなく、週に2日からスタートし、体調や心の準備が整うのを待ってから徐々に登校日数を増やしていくことができました。この柔軟な仕組みが、彼女のプレッシャーを大きく軽減してくれました。
片道1時間という通学時間も、自分で行きたい時に行くという主体性があったため、全く苦にならなかったといいます。午前中は自宅でリモート授業を受け、午後からは大好きなテニス部の活動のためにだけ登校するといった、自分専用のスケジュールを組むことができました。テニスコートや体育館といった施設も充実しており、同じ通信制の仲間たちと汗を流す時間は、まさに彼女が求めていた「高校生活の青春」そのものでした。
無表情な世界から、表情豊かな温もりのある世界へ
かつての彼女を苦しめた「無表情な大人への恐怖」を拭い去ってくれたのは、清心女子の先生たちでした。担任の先生はもちろん、科目の先生たちも、学校ですれ違うたびに親身になって声をかけてくれました。生徒とのコミュニケーションを大切にする先生たちの温かな表情に触れるうち、彼女は少しずつ心を開き、安心して学校生活を送れるようになりました。
友人関係においても、固定されたグループに縛られることのない、フランクで風通しの良い雰囲気が彼女を救いました。体調が悪くてしばらく休んでしまっても、再び登校した際には「久しぶり!」と明るく迎えてくれる仲間がいる。その「一人ではない」という確信が、彼女の自信を少しずつ、けれど着実に積み上げていったのです。
アートとの出会いから慶應大学、そして漫画家デビューへ
この学校には、自分の興味を追求できる「セレクト授業」というユニークなカリキュラムがありました。そこで彼女はアートやファッションの楽しさに目覚め、特にCG制作に没頭するようになります。少人数での個人レッスンのような丁寧な指導の中で、彼女は自分の内面を表現する喜びを見つけ出しました。
この「好き」を突き詰めた結果、彼女の人生は劇的な変化を遂げます。WEBアプリで作品を発表していたところ、プロの編集者の目に留まり、なんと漫画家としての連載を勝ち取ったのです。現在は慶應義塾大学の通信教育課程で経済学を学びながら、締切と向き合う日々を送っています。学業についても「じっくり学びたい」という思いから5年間の計画を立て、自分のペースを大切にしながら未来を見据えています。
立ち止まった時間は、新しい自分に出会うための助走
振り返ってみれば、清心女子高等学校での日々は、彼女にとって最高の時間でした。中学時代に感じていた「自分には居場所がない」という絶望は、いつの間にか「自分の手で未来を描ける」という希望へと変わっていました。
もし今、どこかで「今の学校が合わない」と一人で悩んでいる人がいるなら、どうか知ってほしいことがあります。それは、自分を押し殺してまで今の環境に合わせる必要はないということです。彼女が自分にぴったりの学び方を見つけて才能を開花させたように、あなたにも必ず、安心して呼吸ができる場所があります。一度立ち止まり、勇気を持って自分らしい道を探し始めた先に、まだ見ぬ素敵な未来が待っているはずです。

