通信制高校を選んだ理由と学校選びの決め手:校則の自由さと「自分らしさ」の追求
彼女が通信制高校への転校を意識し始めたのは、高校2年生の夏のことでした。もともとは私立の全日制高校で国際系のクラスに在籍し、英語学習に励む日々を送っていました。しかし、当時の人間関係に悩み、心身ともに疲弊していたことに加え、新型コロナウイルスの流行という不運が重なります。目標としていた留学の中止が決定したことで、彼女は今の学校に留まる意義を見失いかけていました。
再スタートを切るための学校探しにおいて、彼女が最も重視したのは「校則の自由さ」でした。候補の一つとしてクラーク記念国際高等学校も検討しましたが、最終的には屋久島おおぞら高等学校(梅田キャンパス)への転入学を決意しました。
決め手となったのは、髪色などの身だしなみに対する制限が少なく、自分の個性を抑えずに過ごせる環境だったことです。「ありのままの自分でいられる場所」を求めていた彼女にとって、ルールに縛られない通信制という選択肢は、失いかけていた自分自身を取り戻すための不可欠な条件でした。
屋久島おおぞら高校でのリアルな生活:独自の「マイコーチ制度」と「みらいの架け橋レッスン®」
通信制高校での生活は、全日制とは大きく異なります。屋久島おおぞら高校には、生徒一人ひとりに寄り添う「マイコーチ制度(担任制度)」がありますが、彼女にとってこの存在は、時に支えとなり、時に試練となりました。
距離感に戸惑ったマイコーチとの関係
入学当初、彼女は熱血なマイコーチとの距離感に強い拒絶感を抱いていました。マイコーチの熱血さや近すぎる距離感が肌に合わず、とても辛かったと彼女は語ります。特に連絡用アプリ「Mana-Com(マナコム)」を通じて毎日届く連絡が、彼女を悩ませていました。返信を避けていると親にまで連絡が行く仕組みや、プライベートな領域にまで深く踏み込んでくるコミュニケーションに対し、彼女は「しんどい」と感じていました。
しかし、時間の経過とともにその関係性は変化します。熱血なマイコーチに慣れるまでには長い時間がかかりましたが、3年生になる頃にはようやく会話を楽しめるようになったといいます。それでも彼女は、「最初は圧がすごかった」と当時を振り返りました。
共通点を持つ仲間とのキャンパスライフ
梅田キャンパスには全体で約100人の生徒が在籍していましたが、日常的に通学していたのは30人ほどでした。彼女は積極的に周囲に話しかけるタイプだったこともあり、転入後すぐに友人ができました。
キャンパスには、精神的な不調を抱えている生徒や、経済的に裕福な家庭の生徒など、多様な背景を持つ人々が集まっていました。座席は自由でしたが、自然とグループができあがる雰囲気があり、全日制とは異なるものの、一定のコミュニティが形成されていたといいます。
感性を磨く「みらいの架け橋レッスン®」の体験
高校生活の中で特に印象に残っている経験として、彼女は「みらいの架け橋レッスン®」を挙げます。これは机に向かう勉強以外の、ヘアメイク、ネイル、ギターといった多彩なスキルをプロや講師から学べる体験型授業です。
彼女はこのレッスンを通じて、美容や音楽の楽しさに目覚めました。特にヘアメイクやネイルの授業は、自分の外見を整える喜びだけでなく、技術を習得する充実感を与えてくれました。このレッスンがきっかけとなり、彼女は現在でもセルフネイルを趣味として楽しむようになっています。通信制高校は、単に高卒資格を取る場所ではなく、自分の隠れた才能や「好き」を見つける貴重な場となったのです。
屋久島の大自然に触れるスクーリング
通信制高校ならではの行事として印象深いのが、屋久島での4泊5日のスクーリングです。彼女は友人と一緒に参加できるよう希望を出し、相部屋で楽しい時間を過ごしました。冬の屋久島で屋久杉を見学し、普段のキャンパスでは味わえない大自然の中での授業や活動は、貴重な思い出の一つとなりました。
夢を実現した長期留学と大学進学:通信制だからこそできた学習計画
彼女の人生を大きく変えたのは、屋久島おおぞら高校が提供していた留学プログラムへの参加でした。全日制では叶わなかった「海外で学ぶ」という夢を、彼女は通信制の仕組みを最大限に活用することで実現させました。
カナダでの1年間とレポートの両立
彼女が選んだのは、3年生の1年間を丸ごと使ってカナダの現地高校に通うプログラムです。現地の学校は通信制のようなスタイルではなく、毎日通学して授業を受ける必要がありました。
最大の課題は「留学生活と屋久島おおぞら高校のレポート提出の両立」です。彼女は留学前に大部分の課題を終わらせておくことで、現地での学習に集中できる環境を自ら作り出しました。この徹底したスケジュール管理により、余裕を持って海外生活を謳歌することができたのです。
TOEICがきっかけとなった大学進学
帰国後、当初は大学進学を考えていなかった彼女に転機が訪れます。周囲から「せっかく留学したのだからTOEICを受けてみてはどうか。進学にも役立つはずだ」と助言を受けたのです。
結果として、留学で培った英語力を証明するTOEICのスコアが、大阪国際大学 国際教養学部への合格を後押しすることになりました。「地元である関西にいたい」という希望と、「英語を専門的に学びたい」という意欲が合致し、彼女は3年次となった現在、大学生活を謳歌しています。
通信制高校から大学へ:進学後に直面した「ギャップ」と「共通点」
通信制高校から大学への進学は一つのゴールですが、彼女にとってその後の大学生活は、通信制時代とはまた異なる刺激と困難の連続でした。
「90分授業」の壁と学修のきつさ
大学に進学して彼女が最初に直面した最大の壁は、授業時間のギャップでした。屋久島おおぞら高校での授業は比較的「緩やか」で、生徒のペースに合わせた進み方でしたが、大学はいきなり「90分間」の集中を強いられます。
特に、彼女が在籍する国際教養学部のインテンシブクラス(集中クラス)は課題が非常に多く、通信制時代の学習密度とは比較にならないほどハードなものでした。「おおぞらの授業は緩かったので、大学のペースに慣れるまでは本当にしんどかった」と彼女は振り返ります。通信制出身者にとって、この「授業の長さ」と「課題の量」への適応は、進学後に乗り越えなければならない最初の試練と言えるでしょう。
通信制高校と大学の共通点
一方で、彼女は「通信制高校と大学は、本質的に似ている部分がある」とも感じています。それは、「自分のペースで時間割を組み立てる」という点です。
全日制高校のように決められた枠組みに従うのではなく、自分で授業を選び、空き時間をどう使うかを管理するスタイルは、通信制での生活で自然と身についていたものでした。そのため、自己管理が必要な大学のシステム自体には、大きな抵抗なく馴染むことができました。現在は膨大な課題に追われながらも、自分で選んだ学びの道を「楽しくやっている」と語る彼女の表情には、確かな充実感が滲んでいます。
また、彼女には将来の明確なビジョンもあります。実家が飲食店を経営している影響で、自身も飲食の世界に魅力を感じており、調理師免許の取得を視野に入れています。「いつか自分のお店を持ちたい」という夢に向かって、大学での学びと並行して一歩ずつ歩みを進めています。
保護者を説得した「プレゼン資料」と、後輩へ伝えたい強みの作り方
通信制への転校は、決してスムーズに認められたわけではありません。特にお父様は、中途半端なことを嫌う性格であり、私立の全日制を辞めることに対して強く反対しました。
根拠を示して父を説得
お母様は彼女の精神的な不安定さを察して背中を押してくれましたが、お父様を納得させるために、彼女は自ら調査に乗り出しました。
転校にかかる具体的な費用
転校後の学習計画
通信制で何を達成したいのか(留学やバイト、資格取得など)
これらをまとめたプレゼン資料を作成し、お父様と6時間に及ぶ話し合いを行いました。単に「今の学校が嫌だから辞める」のではなく、「全日制ではできないことに挑戦し、自分の目標を達成する」という強い意志を示したことで、最終的に「やりたいようにやりなさい」と認められたのです。
全日制ではできないことをやる
彼女は後輩たちに対し、「全日制の高校ではできないことをやることが最大の強みになる」と語ります。彼女の場合はそれが長期留学であり、資格取得やアルバイトへの挑戦でした。通信制という自由な時間を、どう自分への投資に充てるか。その約束こそが、周囲の理解を得るための鍵となります。
通信制高校選びで失敗しないためのチェックリスト
納得のいく進路選択をするために、学校見学や資料請求の際に確認すべきポイントをまとめました。
校則の許容範囲: 髪色、服装、ピアスなど、自分が自分らしくいられるルールか。
担任(コーチ)との距離感: 独自のサポート制度(マイコーチなど)の頻度や連絡手段が自分に合っているか。
学習アプリ・連絡手段: 毎日連絡が来るのか、どの程度の返信が求められるのか。
留学・専門コースの有無: 全日制にはない独自のプログラム(長期留学、ネイル、メイク等)が充実しているか。
スクーリングの場所と頻度: 本校(屋久島など)へ行く必要があるのか、宿泊日数はどのくらいか。
進路実績とサポート: 推薦入試やTOEICなどの資格試験に対する指導体制は整っているか。
生徒の雰囲気: 通学している生徒の人数や、キャンパスの空気感が自分に合っているか。
費用面: 入学金、授業料のほか、スクーリングや留学、サポート校(おおぞら高等学院など)の追加費用はいくらか。
学べるスキルの幅: 「みらいの架け橋レッスン®」のような、趣味を広げる体験授業があるか。
自分の「武器」を作れるか: 自由な時間を活用して、プラスアルファの活動ができる環境か。
通信制高校に関するFAQ(よくある質問)
Q1. 全日制から転校して、友達はすぐにできますか?
キャンパスの規模にもよりますが、おおぞら高校のようなサポート校を兼ねた場所では、同じ時期に入学した生徒や、似たような悩みを持つ生徒が多いため、自分から少し勇気を出して話しかければ比較的早く友人ができる傾向にあります。
Q2. 「マイコーチ制度」がしんどいと感じたらどうすればいいですか?
一度マイコーチを選んで決定した後でも、変更を依頼することは可能です。 おおぞら高校では、入学後にいろいろなコーチとの交流を経た上で、自分に合うマイコーチを選んでマイコーチが決まります。最初から自分でマイコーチを選べる仕組みですが、それでも合わないと感じた場合には変更を依頼することも可能な模様です。
Q3. 留学中も通信制高校のレポートは必要ですか?
はい、日本の高校を卒業するためにはレポート提出が必須です。留学先の勉強と両立するのは大変なため、留学前にできるだけレポートを終わらせておく「ストック」を作っておくのが、現地生活を楽しむコツです。
Q4. 通信制高校から大学進学は不利になりませんか?
決して不利ではありません。彼女のように留学で英語力を磨いたり、TOEICで高スコアを取得したりするなど、通信制ならではの「自由に使える時間」を活かして武器を作れば、大学進学の道は大きく開かれます。
Q5. 親を説得する自信がありません。どうすればいいですか?
ただ「辞めたい」と言うのではなく、具体的な将来の展望を見せることが重要です。学費やカリキュラムを自分で調べ、具体的に説明しましょう。「今の学校ではできない、この学校だからこそできること」を明確に伝えることが、親の安心感に繋がります。
Q6. 「みらいの架け橋レッスン®」とは何ですか?
屋久島おおぞら高校独自の体験型授業です。ヘアメイク、ネイル、ギター、スポーツなど、高校の教科書以外のことをプロや講師から学べます。これがきっかけで新しい趣味や将来の目標が見つかる生徒も多くいます。
Q7. 大学の授業についていけるか不安です。
通信制高校は自分のペースで学習するため、大学の90分授業や課題の多さに最初は戸惑うかもしれません。しかし、自分でスケジュールを管理する能力は通信制で培われているため、慣れてしまえば大学の自由なスタイルは通信制出身者に合っていると言えます。

